家族問題相談室
愛着障害について
── 人とのつながり方を理解する、一つの視点として ──
「人を信じたいのに、信じることができない」
「人が怖い。でも、一人でいることもつらい」
「相手に嫌われたり、見捨てられたりすることが怖い」
「親しい人ほど、なぜか関係がうまくいかなくなる」
「人との距離の取り方が分からない」
こうした生きづらさを抱えていても、その理由が自分では分からず、
「自分の性格が悪いからではないか」
「自分には人間関係を築く力がないのではないか」
と、自分自身を責め続けている方がいらっしゃいます。
その生きづらさを理解する一つの視点に、**「愛着」**という考え方があります。
「愛着」とは
愛着とは、子どもが身近な養育者との関係を通して育んでいく、情緒的なつながりを指します。
幼い子どもは、不安なときや怖いとき、自分一人で気持ちを整えることができません。
泣いたときに誰かが来てくれる。
怖いときに守ってもらえる。
困ったときに助けを求めることができる。
そうした経験を重ねながら、子どもは少しずつ、人との関係の中に安心を感じるようになっていきます。
一方で、幼少期の養育環境や人間関係には、
一人ひとり異なる事情があります。
安心できる関係が十分に得られなかったり、
大切な人との別れや家庭内の葛藤などを経験したりすることが、
その後の人との関わり方に影響する場合もあります。
ただし、幼少期の経験だけですべてが決まるわけではありません。
その後に出会う人々や環境、さまざまな人生経験によって、人との関係のあり方は変化していくことがあります。
「大人の愛着障害」という言葉について
近年、書籍やインターネットなどで「大人の愛着障害」という言葉を目にすることが増えました。
ここで大切なことがあります。
一般に使われている**「大人の愛着障害」は、成人に対する正式な医学的診断名ではありません。**
そのため、「人を信じられないから愛着障害」「人に依存してしまうから愛着障害」
と、いくつかの特徴だけから自分や他人を決めつけることはできません。
人間関係の悩みや生きづらさには、家族関係、これまでの経験、現在の生活環境、心身の状態など、さまざまな要因が関係しています。
家族問題相談室では、「愛着障害」という言葉だけでその方を捉えるのではなく、愛着という視点も、その方自身を理解するための一つの手がかりとして考えています。
人との関係に現れる「生きづらさ」
愛着という視点から自分自身を振り返ったとき、たとえば次のようなことに思い当たる方もいらっしゃるかもしれません。
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人を信じることが難しい
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人との適切な距離が分からない
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見捨てられることへの不安が強い
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人に頼ることができず、一人で抱え込んでしまう
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反対に、特定の人に強く頼りすぎてしまう
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自分には価値がないように感じる
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感情を抑え込みすぎたり、強く表してしまったりする
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親しい人との関係ほど苦しくなる
しかし、これらは「愛着障害かどうか」を判断するためのチェックリストではありません。
大切なのは、「私はなぜ、こう感じるのだろう」「私はなぜ、人との関係で同じ苦しさを繰り返すのだろう」と、自分自身を理解していくための手がかりにすることです。
自分を責めることから、自分を理解することへ
人との関係で繰り返してきた行動の中には、かつて自分を守るために必要だったものがあるかもしれません。
人を簡単に信用しないこと。
自分の気持ちを表さないこと。
誰にも頼らず、一人で頑張ること。
反対に、誰かとのつながりを強く求めること。
それぞれに、その人がこれまで生きてきた背景があります。
ですから、「こんな自分は駄目だ」と責めるだけではなく、「なぜ私は、このような人との関わり方を身につけたのだろう」と考えてみる。
そこから、自分自身に対する見方が少しずつ変わっていくことがあります。
愛着は「自分を決めつける言葉」ではありません
愛着について知る目的は、「私は愛着障害だから仕方がない」と自分を決めつけることではないと、私は考えています。
むしろ、これまで理解できなかった自分自身の感情や行動、人との関わり方について、別の角度から考えてみる。
そして、これからどのような人間関係を築いていきたいのかを考える。
愛着という考え方は、そのための一つの手がかりになり得ます。
家族問題相談室では、「愛着障害」という言葉に人を当てはめるのではなく、まず、その方がこれまでどのような人生を歩み、どのような思いを抱えてこられたのかをお聴きすることを大切にしています。
「あなたは何に当てはまるのか」ではなく、「あなたは、どのように生きてこられたのか」。
そのことを一緒に考えていきたいと思っています。
「克服」ではなく「修復」という考え方
愛着について理解していく中で、
私は、大人になってからの愛着の問題を「克服する」のではなく、
少しずつ「修復していく」という考え方を大切にしています。
これまでの経験をなかったことにするのではなく、
人とのつながりや安心できる関係を通して、自分自身や人との関わり方を少しずつ見つめ直していく。
その「修復」について、私自身の考えをまとめています。